【略略茶酔日記】永田歩美

「略略茶酔日記」は、茶酔から茶葉を送り、その茶を飲んだ日の日記を書いてもらう、茶葉と日記の交換企画。茶葉の説明は一切伝えず、自由に飲んでもらいます。日常の延長線上でカジュアルに茶を楽しむ「現代の茶の略」の実例を収集するシリーズです。


11月17日

ケンタッキー食べたいから今晩買っていくね!と朝から友だちがLINEしてきた。今日はうちで彼女の推しのライブDVDを鑑賞する。もし近くにマックがあればポテトもお願いしたい…と投げてみたら、ポテトはやっぱりマクドナルドだよね!!!!と威勢よく打ち返してきた。馬が合う。

二人でチキンにかぶりつきながら、うち、ごちそうといえばケンタッキーなんだよね〜という話を聞く。わたしは最後に食べたのがいつだったか思い出せないくらい久しぶりに食べたけど、今日はいつもよりおいしかったな。

脂ものを食べたあとはお茶かなと想像しながら、お茶か珈琲淹れられるけどどっちにする?と聞くとお茶!と返してきてやっぱり馬が合うなと思う。

どれにしようかと一緒に茶葉の香りを嗅いでみる。「なんかゆかりみたいな香りしない?」「えっ、そうかなぁ?」「これ変わった形だね」「うん、香りがうっすらしかしなくて味の想像つかないね」わからない同士で2、3やりとりをしてから、わたしが独断で選んで淹れた。自己本位を投げ合って心地がいい相手は大事にしたい。

11月18日

いっきに寒くなった。昼間から頭には温泉の二文字。思った通りに行ける日もあれば、だらだらしてしまって行けない日もある。でも今日は行けた。

何かで成田悠輔が、喫茶店でよく他人の話に聞き耳を立てているといっていたけど、わたしはそれを温泉でもやってしまう。みんなの気が緩んでいるのがいい。聞いてもとりとめのない話が多いから覚えていないことがほとんどだけど、どうしても今日は引っかかる話題があった。バキ童の弟が風呂をやめて、風呂に入らなかったらだんだん香木の香りになって臭くなくなった、という話。どういうことだよ。

気になりすぎて帰ってから調べると、たしかにそれについて話している動画があがっていた。うーん、本当かなあ。飲んでいたお茶が絶妙な品の良さを纏っているせいでなんかいい匂いなのではないかというイメージに傾いていく。そうか、人は風呂に入らないと木になるのか…と妙な着地点がみつかったから、よく眠れそう。

11月19日

ここ10年くらい朝は白湯(正確には熱湯を水で割ったお湯)を飲んでいる。起きたらのそのそとリビングのカーテンを開けてやかんのお湯を沸かす。そのままいつもは珈琲を淹れるけど、今日はお茶にしよう。多めに淹れた残りは水筒に注いで仕事へ向かった。

わたしの仕事場はもともとお茶屋さんの持ち蔵だった。小さな庭もあってそこには茶の木がある。ちょうど今花が見頃を迎えているんだけど、今年はどうしたのっていうくらいにたくさんの花が次々咲いている。こんなふうに風情があるとてもいい空間に、一つだけ悩ましいところがある。冬の間とにかく底冷えすること。現実的な対策として、腹巻付きの厚いレギンスと温かい飲み物が欠かせない。朝水筒にいれた飲み物はだいたい午前中に飲み干してしまうから、あとはただのお湯を飲んでいる。身体を温めたい一心で飲んでいたら、あるときお腹の調子がいいことに気がついた。巷では温活だの腸活だの活動が溢れていて、はいはい、と思うんだけど、ここ10年の実感を積み重ねてわたしはお湯を心から信仰している。


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玉川野点