台湾茶とは — 高山が育む香りと甘み、島独自の希少な茶

台湾茶とは、台湾で作られた茶のことです。
日本で作られた茶は日本茶、中国で作られた茶は中国茶というように、シンプルに地域を指す名称です。
ただ、日本茶といえば緑茶、というように、台湾茶は烏龍茶がほとんどというイメージです。

甘みや香りの強いお茶が多く、初心者にも飲みやすくて人気です。が、実は意外と、虫と一緒に作るといったディープなお茶もあり、バリエーションが豊富です。

日本と同じように、大陸から離れた島の中で独自の発展をしています。

代表的な台湾茶

有名どころとしては「東方美人」「文山包種」「凍頂烏龍」「木柵鉄観音」
この4つの茶は台湾四大銘茶とも呼ばれています。

ここでは台湾四大銘茶のそれぞれを簡単に紹介します。

東方美人茶

東方美人は台湾茶の中でも特に高級とされる茶の一つで、ハチミツのような甘みと香りが特徴的。

この魅惑的な香りはなんと、ある昆虫との共同作業で作られています。
茶樹つくウンカという小さな虫です。
この虫が茶葉を噛むと、茶樹は独特の香気成分を発します。
この香りがウンカの天敵の蜘蛛などをおびきよせる、いわゆる茶樹の自己防衛メカニズムなのです。

かつて茶を噛む害虫として除去されていたウンカですが、ウンカに噛まれた茶葉が甘くなることが偶然発見されたことが東方美人の始まりと言われています。

ウンカのために農薬を使わず、そのユニークな製法と希少性、独特の甘み。
東方美人は非常に珍重されます。

文山包種茶

文山包種は、台北近郊で生産される茶です。
清らかな花の香りが魅力で、「清茶」とも呼ばれます。
苦みや渋みが少ないため、初心者にも飲みやすく人気です。

イメージとしては烏龍茶と緑茶の間の茶。
烏龍茶と同じ青茶に分類されますが、酸化の度合いが低く緑茶に近いものになります。
茶葉や水色も緑に近い色をしていて、味わいもすっきり。

また、昔は紙に包んで販売されていたことから、「包種」という名前がつけられました。

凍頂烏龍茶

凍頂烏龍茶は台中の凍頂山周辺を産地とする烏龍茶。
茶葉はコロコロとした半球型をしています。

凍頂山と聞くととても寒い雪山のようですが、実際は一年中春のように温暖で茶樹がよく育つ環境で、台湾の高山茶の中でも比較的標高は低い部類。

バランスがよく、ふくよかさ、まろやかさに定評のある茶です。
焙煎をしない清香型と、焙煎が重い濃香型のバリエーションを楽しむことができます。

木柵鉄観音

木柵鉄観音は、元々中国安渓の鉄観音茶に由来し、台湾の木柵地区で独自の進化を遂げた茶です。

焙煎を強くすることで深い味わいと芳醇な香りを引き出しており、カテキン含有量も高いことが特徴です。安渓鉄観音が焙煎をしない清香タイプが主流であるのに対し、木柵鉄観音は焙煎の重い濃香タイプとしての地位を確立しています。

以上が台湾四大銘茶でした。

他にも、「阿里山」「梨山」など、さまざまな山の名前を冠する茶をよく目にしますが、こうした茶を総称して「高山烏龍茶」といい、台湾茶の代表格となっています。
「どの山の茶なのか」を具体的に商品名に明記しているということです。

茶葉の品種は「青心」が基本で青心烏龍茶などと呼ばれます。
基本品種なので明記されないことが多く、それ以外の「四季春」「金萱」といった品種はあえて商品名になることが多いです。
「四季春」は、一年中収穫可能なためこの名がついていて、比較的安価。
フルーティな香りと軽やかな味わいが魅力です。
「金萱」は新しい品種で、ミルクのようなクリーミーな香りを楽しむことができます。

コロコロとした球のような茶葉

台湾茶では球のように丸まった茶葉をよく目にします。
これは製茶過程で揉んで丸められているためです。
この工程は「包揉」といいます。

包揉はもともと中国で行われていたものです。
台湾茶は中国茶にルーツを持っていて、200年ほど前に商人が中国・福建省から茶の苗木を持ってきたことが始まりと言われています。

丸められることによって茶葉が密閉され、香りが長持ちするようになっています。

焙煎で変わる「清香」と「濃香」

台湾茶にはざっくり「すっきりタイプ」と「どっしりタイプ」があり、それぞれ書いてその名の通り「清香(チンシャン)」「濃香(ノンシャン)」といいます。

製茶工程の最後に焙煎を全くしないかもしくは軽めに仕上げると清香に、焙煎をしっかりすると濃香になります。

清香は青々としてフレッシュな香り。
最近のトレンドとしては、全く火が入ってない仕上げの茶葉の人気が高まっています。
焙煎をしない分、緑茶のように保存があまり効かない茶葉となるため、なるべく早く飲んでしまうのが吉です。
それゆえ、流通したらすぐに飲んでその年の茶を楽しむ、一期一会な茶となっています。

濃香は表面に炭焙煎の香ばしい風味がつき、特に1煎目は焙煎香が強く抽出されます。
煎を重ねるにつれて焙煎香よりも茶葉そのものの旨みが出てきて、だんだんと茶の輪郭が浮かび上がってくるような楽しさがあります。
また、焙煎を施すことで保存もきくようになり、5年以上寝かせたものは陳香(チンシャン)という独特の香りを帯びてきます。


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