雑誌『アイデア』407号 茶酔インタビュー
雑誌『アイデア』407号(2024年9月10日 発行)の特集「紙媒体がつなぐ未来」にて茶酔のZINE『茶酔叢書』を取り上げていただきました。
このテキストは、特集にてインタビューしていただいた内容です。
最新号の発行を待ち、こちらに掲載いたします。
アイデア編集部のみなさん、ありがとうございました。
—媒体名の由来、主要な特集テーマや概要、編集方針はどのようなものですか? 編集スタッフの構成や具体的な編集方法についても教えてください。
「お茶酔い」という体験を伝える現代の茶書として『茶酔叢書』と命名しました。お茶酔いとは、何煎も熱茶を飲み続けることでカフェインやミネラル、温熱効果でリラックスすると同時に覚醒する現象のことです。
特集の軸は、茶の伝説から着想した中国茶SFマンガ。このマンガが、神話や逸話が数多く残る中国茶の壮大さ、作法の要らない親しみやすさ、さらにはお茶酔いによる浮遊感といった中国茶文化全体を伝える装置として機能します。そしてそれを補う形で背景情報や実際の茶会体験のコラムを入れ込む。こうすることで、頭でっかちなお勉強にならず、知識よりも体験が先立つ構成になる。これが編集方針です。
チームは4人で、肩書き以前に全員が一介の茶好き。毎巻、茶についての体験や民話などを持ち寄り、それをマンガのプロットに昇華させる。そうして完成した原作をマンガ担当の最後の手段に渡し、マンガにしてもらいます。
—出版不況のなか、雑誌の休刊が相次ぎますが、なぜいま「雑誌」という印刷メディアを媒体として選んだのでしょうか? 雑誌メディアの今日的な魅力や可能性を感じる点について教えてください。
当該カルチャーのバイブルになるような書籍を作りたいのですが、いきなりまとまった本を刊行するのはハードルが高かった。そこで、進捗した分を雑誌に随時まとめていくスタイルを選びました。この方法ならライトに刊行し続けて反応を見ながら表現をブラッシュアップしていくことができます。読者としても、成立へと至る途中過程の荒削りな状態に触れられるのは雑誌の魅力だと思います。
それはウェブでも可能ですが、画面の外に流れていってすぐに忘れ去られてしまう。バズっても不本意で、いたずらな流入はコミュニティの純度を下げ、醸成途上のカルチャーを破壊してしまう。紙媒体は作るのが大変だからこそ丁寧に読まれ、ゆるやかに仲間を増やして文化を育んでいくことができる。バイブルへと至る道のりとしては最適だと思っています。
—誌面のデザインや装丁、用紙の選び方などについて、意識しているポイントや工夫している点がございましたら、教えてください。
「現代の茶書」を考え抜きました。茶は今では当たり前の存在ですが、かつては数々の茶書を通して画期的な嗜好品として紹介され、道まで説かれた。そんな茶書体験のように、お茶酔いという切り口からもう一度茶と出会い直す書を目指しました。
そこで第一に、茶の雑誌だと思われない装丁に。表紙で説明すればするほど茶に興味がない人は見向きもしない。文字情報を極力削り、題字すらギリ読めないレタリングにしました。これで読者は文字や意味ではなく、印象や雰囲気からこの本と感覚的に通じることができます。ポップなイラストに対比させてレイアウトは古文書風、組み方向は縦書きで、右綴じの製本。書物のフォーマットに現代のマンガを流し込んだような、私たちなりの茶書の再解釈です。このミステリアスでアジア的な “書物感” と現代的でカジュアルな “ZINE感” とのバランスを大事にしました。
—媒体の流通形式について教えてください。また、そうした形式を選んだ理由や流通面での課題などがあればおうかがいしたいです。
主にオウンドEC、自主イベントでの販売、書店での取り扱いが中心です。もともと茶会イベントをコンスタントに開催しているプロジェクトなので、刊行イベントに頭を悩ませる必要がないのはラッキーでした。こうした直販の方が利益率はもちろん良いですが、書店は出会いと広がりをもたらしてくれる貴重なチャネルです。ただ、昨今のリトルプレスブームの影響で、無闇に個人の刊行物の取り扱いを増やさない書店も多いようです。サンプルを送ってクオリティやトーンに納得してもらったり、直接お話ししに伺ったりしています。また、地方都市ではリトルプレスのカルチャー自体がまだ広く浸透していないため「イベントをしてからなら」と言われてしまうことも。全国ツアーのような巡業をしたいです。
—編集制作費の規模感について、可能な範囲でご回答をお願いいたします。また、予算を確保するための工夫・仕組み(広告出稿、クラウドファンディングの活用など)があれば教えてください。
初期費用は100万円前後です。茶会イベントなどでコツコツ集めたお金と個人の資金なんとか頑張りました。広告やクラファン、助成金申請などは敢えて戦略的に行っていません。強いていうならば、オウンドECでの予約販売期間の注文分は早めに売上が入ってきてそれを諸々の支払にあてられるので、なるべく初速を出せるように意識しています。
—「中国茶SFマンガ」という新しい響きの見出しがとても目を引きます。本作が生まれた経緯などを教えていただけますでしょうか。
中国茶は自由で作法がなく、リラックスした状態で誰とでも打ち解けることができる。この魅力を伝えるのに言葉を尽くしてしまうとかえって陳腐になる。それならば、それを感じられる世界を創ってしまおうということでマンガの力を借りました。宇宙人と茶を飲むのが一番だと思い、すぐにSF設定に。中国茶のロマン溢れる逸話も大好きなので、お茶酔いすると飲んだ茶の神話を追体験できたり、伝説にちなんだ幻想が広がったりする設定にしました。主人公のピオちゃんは地球に留学している火星人。友達は地球人、宇宙ペルシャ猫、ホログラムの思念体。異形も異類もみんな一緒に茶を囲み、お茶酔いの力で時空を超える。難しいルールやストイックな精神道といった茶にまつわるステレオタイプを破壊してくれるこんな世界観を求めていました。
—今後予定されている企画や媒体の展望、あるいは直近の刊行予定など、お答えいただける範囲で教えてください。
9月に巻二を刊行します。来年には巻三の刊行も計画中です。
巻三くらいで一回まとめて再編集・増補して書籍化できたら嬉しいです。また、マンガを描いてくれた最後の手段はアニメーターでもあるので、いつかアニメ化したいです。