茶壷の種類——中国茶器・急須の違い

中国茶器の中でも必ず必要になる「茶壷(ちゃふー)」の種類について紹介します。

茶壷とは中国茶用の急須のことで、非常に多くの種類があります

その中でも今回は基本となる「土」と「形」とで大まかに分類を見ていきます。

また、使い込んで茶壷を育てる「養壷(やんふー)」についても紹介。

 

土の違い

茶壷(中国茶の急須)の生産で最も有名なのは江蘇省・宜興(ぎこう)。

その地元で採れる「紫砂(しさ)」が中国茶との相性が非常に良いことから、一大窯産地になっています。

紫砂で焼き締めた陶器は表面に無数の細かい穴があいており、それが茶渋やアクを吸着してお茶の味わいをまろやかにしてくれます

また、保温性が高いのと同時に通気性にも優れており、お茶と茶葉の鮮度を保ってくれます。

紫砂の中にも色合いや成分によって種類があり、紫泥(赤紫)、清水泥(暗い赤)、紅泥(朱色)、段泥(黄色系)などが代表例です。

紫泥(しでい)

ランクとしては高級品です。そのまま紫砂とも呼ばれることもあります。

保温性が高いため美味しくお茶が入るほか、養壺(後述)で味わいが増していくことも魅力のひとつです。

紅泥・朱泥

きれいな朱色が特徴的で、中国茶器といえば朱泥の茶壷を思い浮かべる人も多いでしょう。

クセも少なく扱いやすいため、入門には最適と言えるでしょう。

段泥(だんでい)

黄色が特徴的な段泥。

茶壷を使い込むうちに色合いが濃くなっていくため、ファンも多いです。

表面の穴が大きく、香りを存分に吸着するため、特定品種の茶葉専用に使用されることも多いです。

形の違い

土の違いのほか、形状でもいくつか種類があります。

ここでは特に代表的な「水平壷」「西施壺」「龍蛋壷」について紹介します。

水平壷(すいへいこ)

水平壺は、使い易く宜興の茶壺の代表的な形で、初心者向きです。

蓋を取ったとき「くちばし」・「蓋の穴」・「取手」の三ヶ所が水平に一直線になるのが名前の由来です。

このラインが一直線になっているかどうかが、良い水平壷のひとつの基準にもなります。

 
水平壷
 

西施壺(せいしこ)

西施壷は丸っこいフォルムが特徴的な茶壷です。

くちばしもおちょぼ口のようで愛らしい。持ち手は「倒把」といって上下逆についていて、下の方に膨らんでおり、なで肩のよう。

この “なで肩” と “おちょぼ口” が大きな特徴で、2〜3人用の小ぶりなサイズが主流です。

名前の由来は中国4大美人の一人、西施から。西施の乳房の形を模したものと言われており、由来は突然気持ち悪いです。

龍蛋壷(りゅうたんこ)

龍蛋壷は西施壺を縦に伸ばしたような形をしています。

龍の卵を意味し、縁起が良いとされています。

ドラゴンエッグと言ったりもします。

 
 

使って育てる「養壷(やんふー)」

茶壷は丁寧に使ってあげるとどんどん馴染んでいき、味がでてきて、美味しくお茶が入るようになります。

このように、茶壷を使い込んでいくことを養壷(やんふー)といいます

革製品のエイジングのように、いい茶壷は使っているうちにお茶を吸い、独特のツヤがでてきます。

茶壷の表面には無数の穴が空いており、茶の香りも吸着します。

それゆえ、茶葉によって茶壷を使い分けるのがおすすめです。

「烏龍茶にはこの朱泥水平子」「プーアル茶にはこの段泥西施壷」というように、茶壷には専用の役割を持たせてあげるのです

烏龍茶用の茶壷にプーアル茶を入れてしまうと、プーアル茶特有の香りが移ってしまう、なんてこともあり、茶の種類で茶壷を使い分けることは多いです。

また、同じ理由から茶壷を洗剤で洗ってはいけません。洗剤を使ってしまうと穴に洗剤が入り込み、洗剤の匂いが染み付いてしまうためです。

茶壷を洗うときは基本的に水洗いで、指の腹で優しく洗ってあげましょう。


関連記事

前へ
前へ

【入門】中国茶器の種類と使い方 - 茶壷、茶海、聞香杯…最初に必要なもの

次へ
次へ

鉄観音茶とは? | 味の特徴、タピオカブームがもたらしたもの